森と人の輪 立田山憩の森・お祭り広場公衆トイレ
2022年

所在地 :熊本県熊本市
設計監理:株式会社山下設計(曽根拓也+坂本達典+内村梓+前原竹二)
施工  :株式会社ウッディーファーム
外観写真撮影:YASHIRO PHOTO OFFICE(1枚目、2枚目、3枚目)

【寸評】
くまもとアートポリスのコンペで選定された木造の公衆トイレである。遠景では、ドーナッツ状の非常に薄い屋根が木々に囲まれた景色に溶け込んでおり、S造と見まがう。近景では、皮を剥いだだけの荒々しい木肌を持つ丸太が存在感を示し、明らかに木造だと気がつく。平屋とはいえ水平抵抗要素が必要であるが、トイレの壁を耐震壁としたうえで、偏心を回避するために傾斜した丸太柱にも水平力を負担させている。傾斜した丸太柱は、上部のレシプロカル梁、下部の基礎に緊結しており、接合部にはホームコネクターを用いている。柱の上下で、やり取りする応力は少し異なるが、綺麗に納めるという主旨は共通するところであり、そこにはホームコネクターの特徴が活かされている。面白いのは、鉛直力のみ支持する柱にカシ・コナラなどの広葉樹を用いているところで、画一的になりそうな丸太柱の集合にアクセントを与えており、個人的には共感が持てる。小さな建物ではあるが、種々のディテールは非常に練られており、全体としてとても綺麗にまとまっている。そのディテールの妙はホームのコネクターなしには考えられず、まさにこの賞に相応しい作品である。
(萩生田秀之 / NPO法人 team Timberize 副理事長)