MOCXION INAGI
2022年

所在地 :東京都稲城市
建築設計:三井ホーム株式会社
構造設計:三井ホーム株式会社
施工  :三井ホーム株式会社
写真提供:三井ホーム株式会社

【寸評】
モクシオン稲城は、「木造マンション」という言葉を世の中に定着させる契機となった建物である。地上5階建てのうち、上層4層を枠組壁工法の1時間耐火構造とし、2時間耐火構造が求められる1階を鉄筋コンクリート造としている。上層の木造部分は、強化せっこうボードを使ったメンブレン耐火構造で、耐火被覆の連続性が重要となるが、柱型、梁型のでない枠組壁工法の強みを活かしながら、設計と施工の合理性を向上させている。さらに躯体のツーバイフォー材に国産カラマツ等を採用するなど、国産材利用にも積極的に取り組んでいる。
また、「木造マンション」の称号を得るために、建物の性能や劣化状況・管理状況等を評価する、あらたな枠組みをつくることにより、従来の木造の償却年数22年と鉄筋コンクリート造同等の47年のいずれかを選択することを可能にしている。「木造の共同住宅はアパート、鉄筋コンクリート造はマンション」という常識を塗り替える、未来の木造業界にとって大変有益な取り組みと言える。
モクシオン稲城は、都市部から郊外まで日本全国どこにでも同じ仕様で建築ができる耐火建築物である。その取り組みやできあがった姿は、今後の都市木造のプロトタイプとなり得るとともに、未来を見せてくれる建築物であると評価された。
以上の理由により、ここにT-1グランプリ2022を贈る。
(安井昇 / NPO法人 team Timberize 理事長)