洋光台南第一住宅集会所・管理事務所
2021年

団地の再生を木造の集会所で

横浜市洋光台にある築50年の分譲団地「洋光台南第一住宅」(全699戸)の給水塔を解体し、集会所・管理事務所を建て替えるプロジェクト。高度成長期に建設され、住民の高齢化や建築の老朽化など、様々な問題を抱える現在の団地を、次の50年のサイクルに導くための中心的なプロジェクトと位置付けられます。持続可能な団地の未来を描く新たな象徴となるべく、木造(準耐火)で計画されました。

高くて大きな一つのシンボルから小さなものが寄り添う場所へ

創建当初より中央の広場に建つ高さ約40メートルの給水塔は団地のシンボル的な存在であったが、耐震診断の結果、地震の際の倒壊危険性が判明、給水塔は解体されることとなり、その基壇部に付随していた集会所・管理事務所機能だけを新しく建て直すこととなった。
RC造の箱型の住棟が建ち並ぶ団地の中に、住民の多様な活動を可視化するfolded roof(連続折れ屋根)と、集まり場を可視化するfloating roof(浮屋根)により生み出されるリズミカルで複雑なかたちが、対比的な木造のスケール感や親密性を持ち込み、新しい風景を作り出す。

小さなルームで囲む大きなフリースペース

集会所の多様な機能と管理事務所をできる限りコンパクトな床面積に納めるために、小さなルームを建築の外周に隙間なく並べ、囲まれた中庭のような空間を共用のフリースペースとしています。
各ルームは団地内歩道や広場に対してオープンな構えで、ルームで展開される活動は可視化されます。住民の集まり場であるフリースペースにアクセスするためにはルームを通過する必要があるため、住民同士の交流が自然に活性化されます。
各ルーム及びフリースペース間は引込戸やカーテンで区切られていて、スペースをコネクトすることで用途に応じて必要な大きさの個室をフレキシブルに作り出すことが可能です。

folded roof(連続折れ屋根) floating roof(浮屋根)

外周に配置したルームには勾配屋根が架かっていて全体でひとつながりの連続折れ屋根(folded roof)を形成します。folded roofは内部に天井の形となって現れ、ルームどうしを緩やかに分節しつつ連続的につなげます。同時に外周に深い軒空間を作り、建築まわりに半屋外の活動領域を生み出します。
一方、中央のフリースペースには柔らかな布のようなHP形状の浮屋根(floating roof)が架かっています。floating roofは木の梁で構成され、ハイサイドライトから入る光の色合いや質感をコントロールします。この対照的な2枚の屋根は、建築の構成や特徴を分かりやすく表現しています。

建築データ

事業主:洋光台南第一住宅管理組合
用途:集会所・管理事務所
所在地:神奈川県横浜市磯子区洋光台5-4-40
建築面積:538.02㎡
延床面積:444.68㎡
階数:地上1階
最高高さ:6.5m
構造:木造(45分準耐火構造)
竣工:2021年3月

設計監理 
建築:株式会社スタジオ・クハラ・ヤギ + team Timberize
構造:株式会社MID研究所
機械設備:有限会社アミージュ企画設計
電気設備・照明計画 有限会社EOS plus
外構・植栽:株式会社マインドスケープ

施工
建築:ナイス株式会社
外構・植栽:横浜緑地株式会社
外灯:株式会社中鉢ホーム