面白法人カヤック研究開発棟・ぼくらの会議棟
2019年

所在地:神奈川県鎌倉市
建築設計:SUPPOSE DESIGN OFFICE
構造設計:TECTONICA
施工:栄港建設
写真:長谷川健太

都市木造への道が開けてから20年経ち、構造や防耐火の技術開発により、それを実現するための環境は整ってきた。もはや都市木造のフェーズは「実現すること」から、「どんな都市木造なのか」が問われる時代へと移っていると言っていいだろう。
この「面白法人カヤック社屋ビル」は、住宅が多く立ち並ぶ地域のコンテクストを読み解き、周辺家屋の素材やスケールを注意深く採集し、それをオフィスへと取り込み再構築された建築である。外観のファサードは3階建てには見えない不思議なスケール感を持ち、周辺に溶け込んでいる。屋内は構造材と仕上げ材が一見ごちゃまぜに混在しているかのように周到にデザインされ、人の心を「心地よく困惑させる」状況を生み出している。こうした空間が鉄骨と木のハイブリッド構造だからこそ成立しているのではないかと思わせる建築であり、新しい都市木造の在り方が提示されていると感じた。
(小杉栄次郎 / NPO法人 team Timberize 副理事長)