八ヶ岳の秘密基地

木の空間の空気感・素材感や居心地の良さは、長時間の滞在や宿泊をすることにより得られると考えてつくった、設計事務所のモデルハウス兼セミナーハウスである。
「色艶のよい天然乾燥の柱・梁や板材」、「躯体を製材した後の端材を大量に使う木摺下地のしっくい壁・天井」、「都市部の防火規制にも対応可能な手焼きの焼杉板外壁」、「防汚・防水のための拭き漆・柿渋塗り仕上げ」など、現在の短工期・大量生産・大量消費の仕組みからは外れた素材・工法を、今一度、現代の目線で見直し、再評価して使うことにした。いつもより少し時間と手間をかければ、同じ材料がこれまで以上に魅力的になることを多くの人に気付いてほしいからである。木材はそれぞれの産地に出向き、長所短所を理解した上で、適材適所に使い分けた。柱・はりは、奈良・吉野の製材所にて1年以上、天然乾燥されたスギ・ヒノキを用い、特に山で大きく育ってきたヒノキを積極的に梁に活用した。また、階段や家具のクリ・ヤマザクラは、福島・南会津の製材所にて、自ら丸太買いし、賃挽き製材後、5年以上桟積み乾燥し使用した。さらに、外壁の焼スギ板は、現場にてワークショップ形式で三角筒焼きをして、木材は火に弱いとの思い込みを解消するための学びの場とした。
「木」の復権・活用には、現代版の「木」と「火」のいい関係を学ぶことが重要と考えている。八ヶ岳の秘密基地は、「木育」と「火育」を同時に実践できる場である。

建築データ

所在地:長野県諏訪郡富士見町
竣工:2017年
構造:木造軸組
規模:木造2階建て
敷地面積:960.90 ㎡
建築面積:57.00 ㎡
延べ面積:81.00 ㎡
建築設計:桜設計集団
施工:建築工房藁、鯰組