トドマツを用いたトラス・ラティス梁
2015年

「下川町のトドマツオフィス」で用いた木造トラス梁を「トラス・ラティス梁」と呼んでいる。トドマツは、北海道内では最大蓄積量を誇る樹種で、これから主伐期を迎えようとしているが、乾燥時のねじれや割れが多く、製材の利用が進んでいない。下川町のプロジェクトでは、木材供給者と設計者が協働し、トドマツに適した乾燥法の研究開発や、それを用いた建築に取組み、大きく育ったトドマツを、パルプやチップにして消費するばかりでなく、建築材料として永く使っていく可能性を探った。

トラス・ラティス梁は、一般に流通するサイズの製材による組立て梁で、トドマツでも乾燥が容易な厚さ9mm 幅 70mm のラティス材を、構造的な合理性と意匠性を兼ね、端部は密に中央は粗に配置している。また、下川町は多雪地域のため安全に配慮し、内側にトラス材も入れている。計算だけでは追えない部分もあるため実験を行ない、必要十分な耐力を確認し、ラティス材がトラスに劣らない粘り強さを発揮することも確認できた。

木造の組立梁は案件ごとの複雑な計算など設計の負担も大きいが、必要なデータの整備・共有が進めば、地元の設計者と施工者の手で、その地域の材料からスパンの大きな建築物もつくることができる。下川町プロジェクトでは、汎用性の高い学校教室程度のスパンに挑戦したが、今後更に、トドマツの豊富な蓄積量を背景に、トラス・ラティス梁の設計要領・スパン表等と部材をパッケージにしたパーツキットの輸出等も検討できるだろう。

製品データ

発注 北海道下川町
木材供給 王子木材緑化
設計 
(意匠)内海彩(team Timberize、内海彩建築設計事務所)
    丸山裕貴(内海彩建築設計事務所 元所員)
(構造)佐藤孝浩(team Timberize、桜設計集団)
(設備)長谷川博(長谷川設備計画)
    守田眞澄(纏企画)
(照明)稲葉裕(フォーライツ)
設計協力 下川町ふるさと開発振興公社
施工 盛永・金子・三賀経常建設共同企業体