CUBE
2010年

CUBE
- 小スパン軸組木構造の中層集合住宅 -

建築の更新と木材の循環
「木」は、軽く、適度な強度を持ち、柔らかで加工しやすい材料であると同時に、コンクリートや鉄に比べて圧倒的に「壊し易い」建材でもあります。
 Cubeは「壊す」という観点から<都市木造>を捉えます。無計画な「スクラップ&ビルド」ではなく緩やかな計画性を持ちあわせた「リ・ニュー(更新)」プロジェクトです。

イメージしたのは、日本古来から続く、伊勢神宮などに見られる式年遷宮です。隣接する古殿地に神宮をそのまま遷すことで、神宮の永遠性・永続性を獲得するこの神事は、建替え時に排出される木材を別の建築にリユースするなど、建築(木材)の循環システムも内包しています。これは木造ならではのシステムです。耐火性能を保持した木造が可能になった今、この「リ・ニュー」イメージを都市集合住宅に重ね合わせることで、シンプルな建築の更新プログラムを構築できます。生活様式は時代によって変化し、それに応じて住宅に求められる性能も変化するのだとしたら、建築それ自体を建替え・更新し続けることで、集合住宅は時代に応じた価値を保持し続けることができます。

このプロジェクトは、30年スパンでの建替えを前提とした中層の木造集合住宅の計画です。10世帯を収容する<15mの立方体ボリューム=Cube>を最小ユニットとし、2間程度のスパンによる柱・壁による軸組木構造で設計しています。<Cube>をつなげていくことで、大規模な集合住宅まで計画することができます。1キューブが建設可能な建替え用地を隣接させた配置計画をすることで、順次<Cube>単位で建築を更新していくことが出来るわけです。

新しいものを「建築する」ことばかり考えるのではなく「建築がどう存在し続けるのか」を今まで以上に考える必要があると思います。「更新し続ける」こと、そして場合によっては「縮小する」というシステムも都市や都市を構成する建築には必要です。その時に「木造建築」の可能性が重要な意味を持ってくるのではないかと考えています。

設計 / 小杉 栄次郎、腰原 幹雄(team Timberize)