ウッドスクエア
2012年

所在地:埼玉県越谷市
建築設計:ジェイアール東日本建築設計事務所、ポウハウス一級建築士事務所
構造設計:ジェイアール東日本建築設計事務所
施工:川田工業

【寸評】

柱とはりに、木質ハイブリッド集成材(柱・はりの鋼材を集成材で耐火被覆した材料)を用いた建物としては、国内最大規模のオフィスビルである。集成材にカラマツを用い、約640㎥の国産材利用を行っている。鋼材と木材をハイブリッドにして使うことにより、木材が自消せず燃え続ける短所と、鋼材が高温になると強度が低下する短所を、お互いにかき消し合い、木材が耐火被覆として燃えるが、鋼材に吸熱されて自消し、鋼材の温度も座屈するほど上がらない仕組みとなっている。
耐火技術ばかりが取りざたされるが、ラーメン構造で構成された空間は、鉄骨造のすっきりさと、木造の暖かさが共有した心地よい空間となっている。防災技術は、目立たないほうがよいと常々思うが、それを実現している「木造らしい鉄骨造の建物」といえ、新しい木材利用のかたちを実践している美しい建物といえよう。(安井昇 / team Timberize)

木質ハイブリッド鋼材内蔵型集成材を用いた国内3事例目の建物で、木材を扱う企業のオフィスビルである。過去2例より規模・木材使用量とも大きく、非常にチャレンジングなプロジェクトである。特筆すべきは、柱梁接合部を剛接合としたラーメン構造としたところ。大臣認定の範囲は「柱」「梁」などの部材限定で接合部に関しては規定がないため、本プロジェクトでは過去の実験例を元に実証実験を行い、接合部(ボルト干渉部)の耐火かぶり厚36mmという数字を導き出した。これにより高力ボルト摩擦接合が可能となり、一般的な鉄骨建方が可能となった。施工時には多くの課題・難題があったことは想像に難くなく、先例の少ない建物を実現させたことは評価に値する。
鉄骨造に木材を纏った梁は、大スパンゆえ若干の違和感を覚えるが、可能な限り木材を表わしにしようという意図が十分に感じられる。クリの無垢フローリング採用や、照明計画など、特別なことはしないが、木を嫌味なく表現するという配慮も好感が持てる要因だろう。
このように設計者の意図する「今後の大規模木造普及につながる汎用性の追求」が設計にも施工にも随所に見受けられ、大規模木造建築のプロトタイプとして十二分な存在感がある。
(萩生田秀之 / team Timberize)