群馬県農業技術センター
2013年

所在地:群馬県伊勢崎市
建築設計:SALHAUS
構造設計:佐藤淳構造設計事務所
施工:関東建設工業

【寸評】

参加要件のハードルが低いこともあり、自身も含め多くの建築家が参加したプロポーザルであった。大屋根で覆う空間は一理あるが、この繊細な構造は本当に実現可能か、一等を取った案に感心しながらも、一構造設計者としてその後の行方が、気になりつつ完成を楽しみにしていた。
木は柔らかい材料といわれるが、鉄やコンクリート比較した話で合って実際には曲げるのは、鉄よりも難しい。物理的に湾曲させようとすると、すぐに割れてしまう。通常はラミナの状態から湾曲させた集成材を使うし、製材を曲げようとすると経験的には40mmが限界である。
この建物が素晴らしいのは、木の通直材を懸垂させて格子状の曲面をつくり「柔らかい空間」を実現しており、それが絶妙なバランスの構造システムとして成立していることであろう。繊細な構造であるのに場に緊張感がないのは、曲面を持った形態と木で構成されているからか。
設計者は「開かれた」施設という要求に対して「木の大屋根」をシンボルとしてその下に人々が集まってくるという空間をイメージしたという。様々な諸室が大屋根の下で一体感をもって配置されており、当初のイメージを純粋に実現化しており、シンボルの大屋根は技術を駆使しながらそのイメージにスッと溶け込んでいる。
まさに、「都市木造の未来を感じさせてくれる建築」であると言えよう。 
(萩生田秀之 / NPO法人 team Timberize 理事)