【ティンバライズ通信 vol.002】
2011/10/19

目次

■エッセイ「木橋について」(萩生田 秀之)
■ティンバライズからのお知らせ
 ● 「team Timberize」会員募集中です!
■ティンバライズからのレポート
 ●NPO法人設立記念セミナー(安井 昇)
 ● 第24回世界建築会議 UIA2011 東京大会(加藤 征寛)
 ●ポラテック本社ビル見学会+木質ハイブリッド耐火建築物セミナー(布施 靖之)
 ●ティンバライズ建築展 in 北海道(内海 彩)
■ティンバライズからの注目ニュース

「木橋について」   萩生田 秀之(team Timberize)

昨年、旅行でスイスに行ったとき、面白い橋を見つけました。写真で示すように古い木橋です。ベルンから電車で30分、ハースレ・リェーグサウ(Hasle-Ruegsau)駅から10分ほど歩いたところにあります。時間の関係でRenzo Pianoのパウル・クレーセンターかこの木橋かどちらかしか見ることができない状況にありましたが、熟考の末にこの木橋を選びました。建築家の方からは「信じられない!」と罵声をあびるかもしれませんが、「やっぱり木造!」と思い、こちらを優先しました。

できたのは1850年代。アーチとトラスを併用したカバードブリッジです。スパンは約58m。驚いたことにこの橋は車道でした。人も通るし、車も通るし、私が見ているときには、馬も通りました。乗馬の練習中に通った模様。緑のある田舎の町の風景として、木橋が自然な佇まいで残っている、すてきな体験でした。

以前に宮崎県日南市の油津というところで、木橋の設計に携わってから木橋に興味をもち、いろいろ見て回っています。このときはルツェルンでカペル橋も見てきました。日本にも愛媛県の内子町付近に古い木橋群がありますね(こちらはまだ見ていません。もぐりですね)。また、神社の参宮橋などにも木造橋は見られます。

さて、この木橋。
当然、明治時代以前、橋はすべて木造でしたが、土木構造物として建築に先行してコンクリートと鉄に置き換えられてきました。建築と同様に都市の不燃化、モータリゼーションへの対応など、その置かれた状況は「木」にとって建築より過酷でした。建築でも不燃化・非木造化の動きはありましたが、かろうじて住宅という需要があったため、木材の消費量はなんとか死守してきました。しかし、木造橋は、1980年代の集成材ブームまでほとんど新規に作られることはありませんでした。timberizeを契機にこの木橋をもう一度見直してみようと思いました。そこで、timberizeの分科会の一つとして「木橋研究会」を近く立ち上げたいと思います。私たちは、木橋を木造建造物の一つのジャンルとしてとらえ、これの普及に一役買おうと考えています。技術的なことはもちろんですが、建築家と一緒にデザインにもちからをいれ、木橋の良さを広められたらと考えています。近々第一回勉強会を開くので、興味のある方は是非ご参加ください。詳細は後日発表します。

NPO法人 team Timberize、会員募集中!

team Timberizeでは木、木造の新しい可能性を探り、共に業界を盛り上げていこうと考えていただける会員を募集しています。

詳しくはこちら

『NPO法人設立記念セミナー』レポート

去る平成23年7月29日(金)に新木場タワーにて、NPO 法人team Timberize 設立記念セミナー「ともに都市木造の可能性を追求する」を開催しました。当日は、木造に興味をお持ちの設計者、施工者、研究者、木質材料の製造者・供給者、マスコミ関係者など約250名の方々に参加をいただき盛会となりました。
セミナーでは、理事長の腰原幹雄より開会の挨拶、副理事長の小杉栄次郎より、NPO化の経緯の説明があり、その後、腰原幹雄、安井昇による木材利用、木質工法・構造、木造防火によるレクチャーがありました。それを踏まえて、これまでティンバライズで取り組みを進めてきた、下馬プロジェクト、木質ハイブリッド学校及び店舗、震災復興プロジェクト(津波避難ビル)などの紹介をしました。後半はティンバライズの理事・監事全員で今後ティンバライズとして、また、各自が取り組んで行きたいことを会場の方々にお伝えしました(詳細の内容は今後メールマガジンにて紹介していきます)。ティンバライズは今後も多くの方々との協同作業で木造建築や木材利用の新しい可能性を模索し、構築し、社会に広く提案していきたいと思います。セミナー開催にあたり、後援をいただいた株式会社キーテック、東京合板工業組合他の皆様に心から感謝申し上げます。なお、セミナーの収益(353,019円)は今後、東日本大震災の復興支援として使います。

<安井 昇(team Timberize)>

『第24回世界建築会議 UIA2011 東京大会』レポート
「東京を創る-Realizing Tokyo after 3.11」「2050 EARTH CATALOGUE展」


9/25(日)に日本で初開催となった第24回世界建築会議UIA2011東京大会が開幕し、私たちteam Timberizeはその一コマの催しである「2050 EARTH CATALOGUE展」及び「東京を創る -Realizing Tokyo after 3.11」に出展しました。UIA大会は建築の世界最大級イベントであり、『建築のオリンピック』とも言われています。

「東京を創る -Realizing Tokyo after 3.11」は、様々な職域で東京を創ることに貢献しながらafter3.11にいかに向き合うかをテーマにおき、東京の多様なプロジェクト全31作品を模型・パネルで構成した展示会です。そこで私たちは、東京表参道を舞台にした仮想都市木造プロジェクト『LATTICE(6階建て事務所ビル)』を展示しました。僅か3日間の開催でしたが、約1800人もの来場者数となりました。

「2050 EARTH CATALOGUE展」では、2050年社会の英知とヒント、思想を、「Environment/環境」「Culture/文化」「Life/生命」の3つのテーマで展示しており、私たちは低炭素型の価値観を持った社会に対する提案として、ここでは仮想都市木造プロジェクトの『PETAL(3階建て商業ビル)』を展示しました。最終日には、ゲストに西沢大良氏を迎えてteam Timberizeメンバーとのトークセッションが行われました。team Timberizeメンバーの『木造の良さをエンドユーザーに伝える為の言葉(言い回し)とは?』という問いかけに対し、西沢大良氏は『治療的(健康になる、病気にならない、身体に効く等々)』と、独創的ですが非常にわかりやすい言葉を使われていたのが印象的でした。

<加藤 征寛(team Timberize)>

ティンバライズ発行の本

「ティンバライズ建築展」スパイラル展カタログ  定価 1,250円(税込)

2010年5月21日~5月30日に青山スパイラルで開催された「ティンバライズ建築展 - 都市木造のフロンティア」のカタログです。情報展示、表参7プロジェクト、実物大展示の他、提案展示や家具展示も解説付きでたっぷりと掲載!都市木造レクチャーやトークセッションも丸ごと収録!全88ページ、フルカラー。

以下の店舗で購入可能です。(アドレスは各店舗のネットショップのものです)
◎南洋堂書店 / 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-21
http://www.nanyodo.co.jp/php/detail_n.php?book_id=N0080471
◎柳々堂 / 〒550-0003 大阪府大阪市西区京町堀1-12-3
http://ryuryudo.blog89.fc2.com/blog-entry-3646.html
◎大龍堂書店 / 〒604-0904 京都市中京区新椹木町通竹屋町上ル 西革堂町175
http://tairyudo.com/tukan6bo02/tukan7533.htm
◎ギャラリー間 / 〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F

○南洋堂の売筋ランキング9ヶ月間ベスト10入り!
○南洋堂の2010年 年間売筋ランキング4位!
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『ポラテック本社ビル見学会+木質ハイブリッド耐火建築物セミナー』レポート

平成23年9月7日(水)、team Timberizeメンバーの腰原、布施、久原、桐野の4名にて、越谷市に建築中のポラテック本社ビル現場見学会(日本集成材工業共同組合主催)に参加しました。この建物は、日本で2棟目となる「木質ハイブリッド耐火建築物」です。これは、構造体である柱と梁が鉄と木を組み合わせた耐火構造部材によって構成される耐火建築物で、現在のところ1時間耐火の認定が取れているため4階建てまでの建築物が可能です。

現場の建物も4階建てで、ちょうど建て方が終わり、外壁の一部が取り付けられているところでした。見学できたのは、1階のホール部分だけでしたが、すでにハイブリッド集成材の柱梁が存在感を放っており、完成したらこの柱・梁だけでも十分木の雰囲気が感じられる空間となるだろうと感じました。柱梁のジョイント部の集成材の複雑な組み合わせも間近に見ることができ、見学者の方々も「木質ハイブリッド」の空間を肌で実感できたのではないかと思います。

後半は場所を越谷コミュニティーセンターに移して「木質ハイブリッド耐火建築物の取組」について、われわれ4人がそれぞれレクチャーを行いました。「木質ハイブリッド構造」はまだまだ世の中に十分認知されているとはいえません。しかし、この構造は木を鉄骨の耐火被覆的に使いながら、仕上としてアラワシにできることが魅力です。また構造自体は鉄骨造をベースにしているため、中低層の公共建築物を木質化するのには、非常に実践的な工法だと思います。今後、更により具体的で詳細な「木質ハイブリッド」構造の開発を進めていくと同時に、人々に広く知ってもらう努力をしていくことが必要だと感じました。

<布施 靖之(team Timberize)>

『ティンバライズ建築展 in 北海道』レポート

去る7月1日~10日、北海道工業大学図書館1階ギャラリーにおいて、「ティンバライズ建築展 都市木造のフロンティア in 北海道」を開催しました。北海道巡回展開催が決定したのは昨年11月頃、開催まで半年以上の時間がありました。単なる巡回展であれば開催に向けて粛々と準備を進めるのみですが、北海道という独特な気候風土の土地での巡回展ならでは特色を出したい、というのが我々ティンバライズメンバーはもとより、北海道側の実行メンバーの強い想いでもありました。そこで、昨年のスパイラル展で建築家や大学研究室に参加していただき表参道で敷地を設定して各々が都市木造の提案をおこなった「提案展示」の北海道版を開催することを決めました。

幸いにも、呼びかけに応じて道内の大学研究者や建築家、構造家の方に集まっていただくことができ、昨年末の顔合わせから開催に向けての約半年余、月1回のペースで「北海道版・提案展示」に向けて様々な話し合いを重ねました。今回の展覧会に直接結び付かなかったものの、新しい大規模木造建築を北海道から発信するならばどういった提案がありうるか、北海道ならではの雄大な風景をつくるような大規模生産施設の木造化とか、林業の現場と近く広くて真直ぐな道路という北海道の地の利を生かす提案がないだろうか、といった議論もあり、時には場所を居酒屋に移して地方で建築をつくる現実のアレコレを実務者同士として色々うかがったり・・・様々な面で充実した準備期間でした。
本巡回展では「都市木造」というテーマのを大きく掲げていたこともあり、北海道版・提案展示は「札幌の中心市街地で各チームが敷地を設定し都市木造の提案
をおこなう」という形にとなりました。

新年度に入って展覧会開催期日も決定し、大学研究室チームではそれぞれ学生が作品制作に加わることとなり、一挙に雰囲気も盛り上がり始めました。月1回のミーティングでは、研究室によっては、数名の学生がそれぞれ案を持ち寄り発表するような形となり、4大学合同の中間講評会のような雰囲気でした。JSCA(日本建築構造技術者協会)北海道支部のご協力も得られて、構造的な面から具体的な意見を出していただいたりしたことも、参加した学生にとっては新鮮な体験だったのではないかと思います。そんな途中経過の様子は、北海道展ブログ(ティンバライズからのリンク有)でも感じていただけるかと思います。

そのような準備期間を経て、7月1日から10日まで開催された「ティンバライズ建築展・北海道巡回展」では、延べ1100名を超える入場者数を数えました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。会期中には、上記の北海道版・提案展示の作品レビューや展示作品に対して来場の方にも投票していただいた”T-1グランプリin北海道”、北大の角幸博先生、平井卓郎先生、ティンバライズメンバーの腰原、安井の4名による基調講演とトークセッションも開催しました。角先生の北海道の木造建築の歴史に関する講演、平井先生の北海道の林業や生産の観点から見た木質材料や木造建築についての講演は、いずれも興味深く、後半のトークセッションも、北海道の気候・風土・歴史が、北海道の木造建築に独特な性格を与えてきたということ、木を新しい建築素材としてとらえて新しい木造建築を生み出していく土壌が北海道にはすでに備わっているようだ、ということが見えてきた内容となりました。

個人的に、北海道で実際に建築の設計・監理の現場に携わった経験から、北海道の気候風土に由来する様々な事情が建築デザインの最終形に大きく影響することには実感を持っていたのですが、今回の展覧会を通して北海道に滞在し、建築について色々な方と話をするうちに、「もう一回北海道で建築つくりたいなあ!」という気持ちがむくむく湧いてきました。北海道のような特徴のはっきりした地域でローカルな事情から生まれる建築デザインについて何か取り組んでみたい、という思いもあります。なかなか機会は簡単に訪れないかもしれませんが、気長にそういう気持ちを持ち続けようと思っています。

最後になりましたが、今回の展覧会にあたっては、北海道内外の様々な方からのご協力・ご支援をいただきました。また提案展示に参加して下さった皆さまのおかげで、非常に充実した展覧会を開催することができました。関係者の皆様に、この場を借りて心より深くお礼申しあげたいと思います。ありがとうございました。

<内海 彩(team Timberize)>

ティンバライズからの注目ニュース

● 執筆情報
『森林技術9月号』日本森林技術協会
「木造住宅から木造建築へ」<腰原 幹雄(team Timberize)>

● 講演会情報
11月3日 14:30-15:30
「住 -都市の森林ー」<腰原 幹雄(team Timberize)>
BioFach Japan オーガニックエクスポ
会場:東京ビッグサイト第4ホール
詳細は、http://www.biofach.jp/ja/seminar2011/seminarlist03.php

11月26日 15:00-17:00
「大規模木造建築物の構造設計の現状と課題」<腰原 幹雄(team Timberize)>
会場:大分県庁 正庁ホール
主催:(社)大分県建築士会、大分県木造建築研究会
共催:大分県、大分県木造住宅等推進協議会
申込先: 大分県建築士会

11月29日 13:00-16:30
「木造建築について考える」<腰原 幹雄(team Timberize)>
会場:すまい・るホール
詳細は、http://www.pbaweb.jp/pub
主催:社団法人 公共建築協会

「ティンバライズ通信 vol.002」をお読みいただき、ありがとうございます。今回のメールマガジンは、展覧会やセミナーなどのレポートを中心に編集しています。巻頭には「木橋について」のエッセイも掲載しました。これからもティンバライズの活動だけでなく、考えていることや挑戦したいと思っていることなども発信していければと考えています。

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<山田 敏博(team Timberize)>

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