KITOKI
2022年

建築設計:株式会社ADX
構造設計:なわけんジム
施工  :株式会社ADX
所在地:東京都中央区日本橋兜町8番5号
写真:Yikin Hyo

【寸評】
中高層の都市木造が様々な形で実現している昨今であるが、その手法としては、1.耐火木材の部材開発によりすべてを木造で実現する方法。2.下層部分をRC造、上層部分を木造として実現する方法等が見られるが、KITOKIはSRC造のメガフレームの中に2層分の木造を挿入した入れ子構造である。
建物全体の構造性能はこれまで高層建築で確立されてきたSRCの技術で担保し、そのフレームの中にやわらかく軽量の木造を採用し、都市の只中に温もりとやすらぎを感じられる木造空間を実現している。今後の都市木造の第3の道として大いに期待が持てる。
中間の木造部分は想定予備荷重としての扱いとしているとのことなので木造部の将来の改変も可能である。また、より大規模な建築での展開にも応用ができそうである。
剛と柔の組み合わせで豊かな空間を生み出す例はこれまで住宅や低層の建築で混構造として試みられてきた。宮脇檀の松川ボックスや阿部勤の自邸のように。
都市の中高層建築においても、RC・SRC構造と木構造の豊かな組み合わせのきっかけとして、この建築はT-1グランプリに相応しい。
(保科章 / NPO法人 team Timberize 監事)