THE WOOD
2021年

所在地 :東京都大田区
建築設計:腰越耕太建築設計事務所
構造設計:TIS & PARTNERS
施工:大藤建設

【寸評】
サスティナブルという言葉が定着して久しく、SDGsやESGが加速度を付加して現在の木造ブームが成立している。これらの言葉は耳に心地よく、なんとなく良いことをしている気がしてしまう。しかし、環境配慮木造という打ち上げ花は、経済的・工学的なバランスを著しく欠いたり、純木造至上主義、木構造至上主義に陥っているものも少なくない。THE WOODはこのようなパラドックスとは無縁な、合理的で真にサスティナブルな建築である。RC4階から、地下RC1層+鉄骨2層+木造4層への改築であり、面積を1.4倍にしながら建物重量減を実現し、既存杭を再利用している。木造とした理由は軽量化のためであり、木造化を地球環境配慮型ブランディングから分離させているのが、好印象。一方で、既存杭再利用がCO2削減に寄与していることはきちんと主張している(きわめて正直)。純木造に縛られず、大スパンが必要な1,2階の事務所は鉄骨造としており、結果として上層4層木造部は1時間耐火となり、経済的にも合理的なかたちとなった。設計の困難さは想像に難くないが、経済的・工学的にバランスを維持し、環境配慮という印籠をまとわない木造をスマートに世の中に提示しており、まさに、都市木造の未来・可能性を見せてくれる、T-1グランプリにふさわしい作品である。
(萩生田秀之 / NPO法人 team Timberize 副理事長)