いわきCLT復興公営住宅
2018年

所在地:福島県いわき市
建築設計:白井設計、邑建築事務所監修:芝浦工業大学 青島啓太
構造設計:日本システム設計
施工:会津土建・渡辺組・菅野建設・山木工業・特定建設工事共同企業体
写真: Nacasa & Partners Inc.

【寸評】

新たな木質材料として注目を浴びているCLT。木造建築としては大型の厚板面材が活用できることに大きな期待がかかり、軸組構造とは異なる面材を用いた木造建築としてさまざまな提案がされている。しかし、面材を用いた建築の基本は壁と床・屋根による建築である。また、伝統的な木造建築で用いられてきた木割と同じモジュールの概念が生産効率を向上させる。木造建築のコスト高が叫ばれる中で繰り返し用いられる部材、構法の整備が重要である。本建物では、大規模集合住宅の利点を活かしながら大版パネルによる工期短縮、金物削減を実現しているとともに、燃えしろ設計を用いることで木造建築の魅力も伝えようとしている。外部のエレベータ棟では鉄骨造+WoodALCを採用するなど、適材適所の割り切りも潔い。こうした一見普通の木造建築の技術が浸透して都市木造の底上げになることを期待したい。
(腰原幹雄 / NPO法人 team Timberize 理事長)

同じ平面と立面を繰り返すCLTらしい使い方がされた木造3階建ての復興公営住宅である。3階建ての共同住宅は1時間準耐火構造でつくることが求められるが、厚いCLTパネルで燃えしろ設計する部分とせっこうボードで被覆する部分を組み合わせて、準耐火性能、耐震性能、遮音性能、断熱性能、設備配線・配管などの建物に必要な性能と機能が上手く設計されている。
先行する海外のCLT建築は、①比較的余裕のある敷地(クレーン利用)、②共同住宅・ホテル等の小部屋が連なる用途(スパンを適度に抑える)、③繰り返しの平面・立面(パネル種類の低減)等の特徴があるものが多いが、日本において、同様な条件や考え方の建物がついに登場したと嬉しくなった。
CLTに精通した設計者・施工者・製造者等による最強チームが、この建物を生み出したことは間違いない。CLTの使い方の一つの特徴である“くり返す”を活かす建築のプロトタイプとなり得る建物であろう。
(安井昇 / NPO法人 team Timberize 副理事長)