梅の里保育園
2011年

所在地:群馬県高崎市
建築設計:竹原義二/無有建築工房
構造設計:下山聡/下山建築設計室
施工:清水
PHOTO:絹巻豊

【寸評】

都市木造を実現するうえで、耐火建築物や準耐火建築物といった耐火性能を満たすことは設計の重要な要件になる。一方、木造建築を建てるとき、その構造体である木を見せたいという要望は多い。それらを同時に満たすには、燃えしろ被覆型などによる設計が必要になる。燃えしろ被覆型の耐火建築物は施工中の物件はあるが、まだ竣工した物件はない。コスト面を考えると、燃えしろ被覆型の耐火建築物が多く建てられるようになるには、まだ時間が必要になるだろう。それに対して、準耐火建築物の燃えしろ設計は十分に現実的な設計手法と言える。
「梅の里保育園」は準耐火建築物の燃えしろ設計による保育園である。
45mmの燃えしろをもつ合わせ柱によって梁をはさみ込み、梁はX軸とY軸で高さをずらす構成にすることで、木の特徴を活かした力強い構造体として表現されている。
また、これらの構造体やハイサイドライトから光が入り込んでくる大屋根によって、保育園全体に一体感を生み出している。
伝統木造がもっていた木造らしい豊かな空間を、耐火要件を満たす現代の技術によって実現しているという点で、「梅の里保育園」は都市木造のモデルの一つと言えるだろう。
(山田敏博 / team Timberize)

架構の特徴は、2階の床梁とまぐさレベルの梁を1、2階通しの柱2本で挟んで「キ」の字型の単位平面架構をつくり、それを90度づつ回転しながら配置することで架構全体をラーメン構造にしているという点である。面白い架構だが、台持ち継手用の部材が柱を貫通している箇所がラーメン構造の弱点にならないか気になる。燃え代を考慮する必要はあるが、ボルトを通して梁受け金物でも出来たのでは。あるいは柱1本を梁2本で挟んで貫通を無くしても良かったのでは。柱を建てるときにあらかじめ梁も組んでおかなければならないので建方が面倒になるということもある。しかし設計者の心情を想像すれば金物で安易に接合するのではなく、台持ち継手で接合しているところが良いのかもしれないし、燃え代を考えると梁2本とするよりも柱2本とする方が有利なのかもしれない。いずれにしても柱2本梁1本としたことがこの空間の大きな特徴となっている。
空間の特徴という点では、保育園ならではのスケールの小ささ、そこに現れた木材の量感も大きな特徴である。3.2mピッチで林立する組柱、まぐさレベルで飛ぶ梁、繊細な根太で組まれた大屋根が、木の中にいる安心感を与えている。
(桐野康則 / team Timberize)