RCSW
2011年

所在地:香川県木田郡三木町
建築設計:六車誠二建築設計事務所
構造設計:ビス計画
施工:六車工務店

【寸評】

都市木造を考える上で、木造以外の構造との混構造へのチャレンジは重要であるとともに、多くの設計者によって行われている。そういう意味では「新しさ」というものはなかなか出てこないものである。
RCSWは適所の混構造と中庭を囲むプランが特徴の建築である。雑誌を頼りに感じたことであるので限定されるとは思うが、建築的もしくは空間的な効果が、ちょうど良いバランスで実現された住宅だと感じた。構造的な観点では、1階のRC造とキャンチレバーのための鉄骨梁の上に木造を載せる、という構想はどれも理にかなっている。建築空間的な観点では、求心的な空間性と発散型の空間性がほどよくミックスされている。どちらの観点からも、目に見えて「新しい」と感じるところはない。むしろ、先達の創造者たちが行ってきた工夫や美学の発見をリスペクトし、王道もしくは正道とも言うべき道を迷いなく進んでいる姿勢が心地よい。その「迷いのなさ」は、悪い意味で「バランスをとる」ことに設計者を陥らせることなく、それぞれの要素が力強さを持った上でのエネルギーに満ちたバランスを導いたのではないかと感じる。明るくて暗い。開放的で閉鎖的。不安定そうでいて安定的。懐古的に見えつつもモダン。などなど、挙げればまだまだ挙げられそうな相反する要素の、天秤のようなバランスこそ、この住宅にそなわった最大の魅力である。
(八木敦司 / team Timberize)

その名の通り、コンクリート(RC)・鉄(S)・木(W)といった三種類の構造材料を巧みに使い分けた三種混構造である。各三種類の構造材料の仕事(役割)は、コンクリート:湿度、音、振動、粉塵を遮断するため、鉄:三間(5460mm)のオーバーハングした上階を支えるため、木:快適で素朴な住空間を造るためであり、まさに適材適所という言葉がピタリと当てはまる。コンクリートにしかできない仕事をコンクリートに、鉄にしかできない仕事を鉄に、木にしかできない仕事を木に、という必然性のある選択をしてたどり着いた構法ではあるが、異種材料同士の接合方法、柱梁の仕口や継手方法、背割れによる自然乾燥など、随所に創意工夫や実験的な試みも見受けられる。
一方で、三種混構造は構造的にも工法的にもコスト的にも非常にハードルの高い構法であり、設計者、施工者間での十分な意思疎通と絶妙なチームワークがあったからこそ実現できたプロジェクトだと思う。
(加藤征寛 / team Timberize)