大阪木材仲買会館
2013年

所在地:大阪府大阪市
建築設計:竹中工務店
構造設計:竹中工務店
施工:竹中工務店

【寸評】

「燃えどまり型耐火集成材「燃エンウッド」を初めて用いた都市木造建築である。1階をRC造、敷地境界にRC造の壁を用いるなど純粋な木構造というには抵抗がある人も多いだろう。しかし、都市に建設される都市木造では、どうしても都市部の周囲の環境に応じてさまざまな構造材料が用いる必要が生じる。特に、他構造に比べて後発で、構造性能、防耐火性能の向上が現在進行形の都市木造では、無理に木造純粋主義になるより適材適所の考えのもと混構造となるのが今のところ自然である。他構造材料の力を利用することにより、木材を用いた快適な空間が生み出されるのであれば、それでよいのではないだろうか。
この建物では、もともと1階のRC造は津波対策、敷地境界のRC造は延焼防止が主な目的で用いられており、さらにそれらを耐震要素として構造的にも利用している。主要空間を構成する木造部分では、深い軒とバルコニーによる水平線と柱梁の線材による架構が表現され伝統的に用いられてきた木造建築の要素を用いて表現されている。既存の桜の木に配慮した平面計画から生まれた特徴的な円弧上の深い軒とバルコニーは、木材の外壁の耐久性を向上させるほか、外壁・軒裏の木材をメンテナンスするためのデッキとしても機能することになる。また、さまざまな木質材料が用いられている吹き抜け空間でも、宙に浮かぶ折り返し階段では鉄骨部材を用いて軽快さを演出している。
こうした構造材料選択の手法と建築形態は、これからの都市木造に求められる「木を使った建築」の提案としてT-1グランプリを贈るにふさわしい建物である。
(腰原幹雄 / NPO法人 team Timberize 理事長)